「はじめての哲学的思考」を読んだ

この本の「まえがき」にこんな文章がある。

哲学的思考の “奥義” を、読者のみなさんに惜しみなくお伝えしたいと思う。

これを読んだ段階では「奥義」がどの程度のものなのかわからなかったけれど、これはもう北斗神拳奥義とかいうレベルの奥義で1000円弱で売って良いのかと思うほどだった。

この本のことは飲茶さんのツイートで知った。

飲茶さんといえば大人気な哲学本の著者だけど、その人がここまで言うわけだから読まないわけにはいかない。そして本当に読んでよかった。

この本は哲学の歴史や哲学者の名言などは中心に置かずに、長い歴史の中で哲学が発見してきた現代人にとっても有用な思考方法をびっくりするくらい平易に説明している。

トロッコ問題のような究極の選択を迫る思考実験は問いそのものがいかにダメなのかを説明してくれるし(本書の中では救命ボート問題が取り上げられている)、相手を言い負かすために確実に反論する方法も教えてくれる(ただし本書はその反論方法自体がむなしいことだとして建設的な議論方法も説明している)。

僕らはいろいろなところで議論する。仕事でもするし家庭でもするだろう。子供に聞かれる何気ない質問もある。本書から奥義を授かれば、そもそも問いがおかしいのではないか、建設的でない単に言い負かすための反論方法に成り下がっているのではないか、本質を見抜こうとしていないのではないか、といったことに気づくことができるようになると思う。

哲学は役に立たない妄想論理をこねくり回しているだけみたいに思う人もいるかもしれないけれど、本質的な思考がいかに現代においても重要か十分に示した名著だと思う。最高です。

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