結構前に買って第1章までは読んでいたのだけど、その後そのままになっていた。最近KindleをiOSのスピーチに読ませることで本を読む(聞く)時間が取れるようになったので第2章から最後まで一気に読んだ。
データの見えざる手: ウエアラブルセンサが明かす人間・組織・社会の法則
- 作者: 矢野和男
- 出版社/メーカー: 草思社
- 発売日: 2014/07/17
- メディア: 単行本
本のタイトルだけ見ても何の本かわかりにくいけれど、センサで人間を細かく測定したデータから人間の心や行動を判定し、どのような行動が業績に影響を与えるか、さらにはどのような施策を打つべきかAIに示させるといった内容になっている。
具体的で応用的な内容が素晴らしい
ただの仮説や理論の提示ではなく、著者らが実験してきた内容が具体的に記されているので読み応えがある。考察も十分あり単なる事例紹介にとどまらない。
前半はウェアラブルセンサでどのような測定ができて何がわかるのか解説されている。どの人と会話したかといった粒度のものから会話中に(物理的に)よく動いているかといった細かな人間行動まで、粒の大きさが異なる様々なデータから人間の行動を解き明かしていくのが面白かったし、最終的にAIにより導かれた施策で効果を出すところにも未来を感じる(実際には現在起きていることだけれど)。
コンピューター将棋のように人間だとまず考えつかないような施策で普通に考えると全く効果が期待できなさそうなのにきっちり効果があったところもいかにもAIらしい。どういう施策だったのかはぜひ本を読んでもらえればと思う。
文章として読みづらいところもあった
一方で読みづらいと感じるところもいくつかあった。一つは説明の重複が多いこと。言葉を変えてわかりやすく説明しているのだと思うけれど、何度も似通った説明を聞いている感じになり話が進まないと感じることが度々あった。
次に細かい脱線が多かった。著名な経営学、経済学者、物理学者などの主張がデータからも正しいと考えられるという説明がたくさん入るけれど、これが分脈を切ってしまい読みにくかった。また日本の現状はこれが原因ではないかといったかなりスケールの大きい推測が断定に近い口調で入ったりするのもやや読むのに障壁だった。著者にとっては確信があるのかもしれないけれど本書の説明内容だけでは言い過ぎに感じる。
著者が考える過去と未来については章を分けて書いてある方が良かったように思う。
ビッグデータの応用事例として欠かせない一冊
とはいえ、やはり内容は良かった。ビッグデータがあってディープラーニングのような手法があってもそれを使って解析するのは結局データサイエンティストによる人力、という状況を変える試みについて良い学びを得たと思う。