強弱表現がない音楽たち

クラシックの楽譜にはほとんど例外なく強弱について指示があって、フォルテ(強く)やピアノ(弱く)といった基本的な指示に始まり、クレッシェンド(だんだん強く)やディミヌエンド(だんだん弱く)なども至る所に書いてある。
音の強弱表現というのは非常に基本的に思われるけど、最近の録音された音楽(つまりCDとか)では強弱表現がほとんど見受けられない。曲の始まりから終わりまでずっと一定の音量だし、囁き声だろうと叫び声だろうと同じ音量だ。映画音楽などではオーケストラの演奏にも関わらず音の強弱があまり感じられないものが増えた。
一番の原因は最近のミックスの仕方だと思う。最近といっても10年以上前からの話。昔の音源は音が小さくて最近の音源は音が大きいと感じたことがある人は多いと思う。あれは最近の音源の音量がフラットになったので全体的に最近の方が音量が大きくなっているだけで、昔の音源が音量の設定を間違えている訳ではない。最近の音源の音量がフラット、というのはこれはたまたまそうなっているのではなくリミッターやコンプレッサーという機器を使ってミックスを行うためこのようになっている。
コンプレッサーというのは簡単に言うと大きな音が鳴った瞬間(例えばドラムの音が鳴った瞬間)に音を小さくする機器で、音をどのように小さくするかは色々と調整できる。波の形が山の形だとすると音量が大きい天辺の音量を押さえるので台形になるイメージ。山の尖った部分がなくなるのでその分全体の音量をあげられる。そういう訳で最近の音源は音量が大きい。
コンプレッサーを使うと聴こえにくい小さな音を大きな音にすることができるので色々な音が聴きやすくなる。また全体を通して大きな音を維持できるので迫力を出すこともできる。そしてその特徴故に電車などの周りがうるさい環境でも聴き取りやすい。
ただ、コンプレッサーによって音量を機械的にコントロールしてしまうと強弱表現はなくなってしまう。確かにイヤフォンで聴く分には聴きやすいのだけどなんだか寂しい気もする。音の強弱表現を大切にしたミックスもあって良いのではないかと思う。とにかく演奏家の表現よりもミックス側の主張が強すぎる印象がある。
ポップス、ロックなどテンポ(音楽の速度)が一定であることが当たり前のジャンルも多いけど、クラシックで速度を変える表現は非常に一般的。色々と単純化されてきているということか。

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。