著者の一人である大須賀先生のTwitterをフォローしていたのでそこから本書のことを知って購入。書中の説明を拝借すると医療データ分析の専門家 津川友介先生、がん治療に特化した「腫瘍内科医」という専門医 勝俣範之先生、新薬開発の専門家 大須賀覚先生の3人による共著。
大須賀先生はいつもトンデモ医療を指摘し、標準医療こそが最善の治療であるということを言っているので、その辺は本書でもしっかり説明されている。
抗がん剤の副作用、特に吐き気を8割なくせるといったことは知らなかったし(制吐薬が開発された)、緩和ケアは治療できることがなくなったときの最後手段ではなく治療初期からやるべきでしかも効果が報告されている点も勉強になった。
がん検診も何を検査すべきか、検査しても見逃す可能性が高いもの、見つける必要のなかったがんを見つけてしまうがゆえのデメリットなど、しっかり説明されていて良い。
文章は読みやすく専門用語もほとんど出てこないけれど、重要なところでは例えば(最近よく耳にする)偽陽性/偽陰性や感度/特異度といった具体的な話にも触れて書かれている。報告はあってもエビデンスが不十分なものは非常に慎重な姿勢で書かれている。どうしてエビデンスが不十分なのかも説明されているので理解しやすい(煙に巻かれた感がしない)。
一点、食事に関するところは注意して読んだ。栄養疫学者の今村先生が指摘しているのを見ていたので。
本書はがんを治す食品はない(証明されたものはない)、特定の食品はがんになるリスクを下げる可能性がある、となっていて慎重には書かれているけれど、おそらく読んだ人は赤肉を避けた方ががんになりにくいと理解すると思う。この辺は今村先生の見解を差し引いて理解しておこうと思った。
各章がとてもコンパクトにまとまっていて飽きずにざっと読み切ってしまえるのに、内容はしっかりしている。ネットであれこれ調べる前にまずこれを読もうとおすすめできる良本。